症状・症例

ケース4

症例:ミニチュア・シュナウザーの避妊雌 7歳

■第0病日
後肢のふらつきを主訴に来院されました。
神経学的検査を実施し、右後肢麻痺(下位運動ニューロン徴候)と左後肢不全麻痺(上位運動ニューロン徴候~正常)を認めました。脊髄疾患を疑い、急な症状の出現であることから椎間板疾患、血管障害、外傷などを疑いMRI検査を実施しました。
その結果、第3~4腰椎レベルの脊髄にT2高信号T1高信号、造影剤で造影強調されない病変、
さらに、第7腰椎-仙椎間レベルの馬尾神経の強い圧迫を認めました。他部位に椎間板ヘルニアは認められませんでした。また、脳脊髄液検査では、細胞の出現は認められませんでした。
これらの所見から、第3~4腰椎レベルの脊髄梗塞(線維軟骨塞栓症)とそれに伴う脊髄炎による症状の発現と診断しました。
ステロイド剤、ビタミン剤の投与を実施し、2日間入院下で経過観察し、その後内服に切り替え退院しました。

■第4病日
四肢着肢して歩行可能でしたが、右後肢はほとんど負重していない様子でした。
歩様はやや改善傾向にありました。

■第7病日
歩行状態に改善がみられ、一般状態も良好なため、ステロイド剤の容量を減らし、内服継続としました。

■第18病日
右後肢の動きはさらに改善傾向にあり、ゆっくりとした歩行であれば、四肢全てをうまく使って歩けるまでに改善しました。(早く歩こうとするとふらつきが見られます)
歩行状態、一般状態ともに良好であった為、さらにステロイド剤の容量を減らしました。


若干の右後肢のもたつきはあるものの、ゆっくり歩く時はしっかりと負重もできており、
歩行はほぼ正常です。走行すると右後肢の負重が弱くなり、他の3肢に頼っています。

■第32病日


歩行状態はさらに改善していました。足先の感覚は未だ充分には回復していませんでしたが、
太ももの皮膚感覚はほとんど左右差もありませんでした。
全身状態も良好であったため、ステロイド剤の更なる減量を行いました。
本疾患は、適切なリハビリテーションが特に重要な疾患であります。
そのため、これまで行っていたリハビリテーションを引き続き行っていきます。
(リハビリ担当:内田)

■考察
本症例は症状の発現した当日に検査・診断を行うことができ、比較的良好な経過をたどっています。
本症例は外科の適応外の疾患であるため、椎間板ヘルニアなどとの鑑別が重要であると考えられます。
今後は、積極的なリハビリを実施することにより更なる歩様の改善が期待されます。