症状・症例

ケース10

症例:頸部椎間板ヘルニアによる難治性の痛みが認められた症例 ミニチュアダックスフンド 5才 メス

寝ている時や、抱いている時などにどこかを痛がり震えるという症状で来院されました。
歩行は可能だが以前よりも動きが悪いとのこと。
院内では明らかな歩行異常は認められず、神経学的検査でも異常は認められませんでしたが、
院内での触診では軽度の頸部痛が認められました。
わずかな発熱も認められたためリウマチや多発性関節炎なので免疫疾患の可能性も考え血液検査を
実施しましたが、CRP・リウマチ因子・抗核抗体に異常は認められず、
関節液の検査も実施しましたが異常は認められませんでした。
軽度の椎間板ヘルニアを疑い、痛み止め(NSAIDs,ガバペンチン)の処方を行いました。
2週間内科治療(安静、痛み止め)を行いましたが痛みの改善が認められなかったので、
MRI/CT検査を行いました。

【MRI検査】
第3-4頸椎間においてやや右寄りにT2強調画像にて低信号の椎間板物質が確認され、
脊髄には重度の圧迫が認められました。

【CT検査(脊髄造影)】
第3−4頸椎間において脊髄液の欠損が認められ、硬膜外からの脊髄の重度の圧迫が疑われました。

【診断】
頸部椎間板ヘルニア

【治療】
今回の症状は痛みだけでしたが内科治療に反応が悪く、
圧迫も重度であったので飼い主様と相談して外科治療を行いました。
手術は腹側減圧術(ベントラルスロット)を実施しました。

■第1病日
術後良好に麻酔から覚め、麻痺もなくすぐに歩行が可能でした。
術直後は首を下げて歩き、痛みが認められた。

■第2病日
痛みが軽減し、首もあげられるようになりました。
自身で首を振る姿も確認され、明らかな神経痛の改善が認められました。

■第4病日
痛み止めを弱めても痛がらない様子であった。
ほぼ正常の歩行が認められ、首の痛みもほとんど確認されなくなりました。
神経学的検査でも異常は認められませんでした。

■第7病日
経過良好で退院としました。

■第14病日
自宅では以前同様に生活が行えており、診察でも異常は認められませんでした。
首の手術を実施しているのでもう少し安静は必要ですが、基本的には治療終了です。