症状・症例

ケース11

症例:首の椎間板ヘルニアに対して片側椎弓切除を行い治療した症例 ミニチュアダックスフンド 10歳

急に鳴いて痛がり、その後から右前足をあげてしまい、地面につけなくなってしまったとの事で夜間に
来院されました。
この子は今まで腰で2回、首で1回、合計3回の椎間板ヘルニアが起きており、すべて重症のため手術を
行っており、後ろ足の軽度のふらつきは残ってはいたものの普通の生活を送れていた子でした。
診察にて右頸部の痛みが認められましたが、右前足に整形学的・神経学的な異常は認められませんでした。
院内でも右前足は完全に挙上していました。
症状から首の右側の神経(神経根)を圧迫する椎間板ヘルニアが疑われたのでMRI/CT検査を実施しました。

【MRI】
第6~7頸椎間、右神経根部位にT2強調画像にて低信号の圧迫所見が認められました。

【CT】
第6~7頸椎間の右側の一部に高CT値の物質が認められました。

【診断】
第6~7頸椎右側における椎間板ヘルニア圧迫物質が右の神経根を圧迫することで疼痛を起こしている
可能性が高いと思われました。

【治療】
今回のようなヘルニアは、麻痺はあまりないので内科治療(痛み止め、安静)にて治療を行う選択肢も
ありますが、症状が長引いたり残ったりする可能性があり、その間に筋肉が極端に落ちていく可能性も
あります。
飼い主様は今まで手術により毎回良好に改善してきたことと、少しでも早く改善し、後ろ足の負担を減
らしたいとのことで手術を希望されました。
手術は片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー)を行いました。通常首のヘルニアは腹側減圧術
(ベントラルスロット)を行うことが一般的ですが、今回のような片側に偏った圧迫がある場合には
腹側減圧術ではうまく圧迫が解除できない可能性があります。
また、この子は前回の手術で今回の前の部位で腹側減圧術を行っているため、今回も同様に腹側減圧術を
行うと不安定が強く出てしまう可能性があるため、片側椎弓切除術を選択しました。
神経根に大きな椎間板物質が認められたのでこれを除去して神経の圧迫の解放を行いました。

■術後4日
軽度の首の痛みは残るが神経学的な改善が認められ起立、歩行が可能となりました。
右前足の着地も確認できるようになりました。

■術後11日
首の痛みもなくなり、自身で自由に首を動かせるようになりました。
ほとんど左右差なく歩行が可能となりました。

■術後60日
以前のヘルニアの後遺症として後ろ足のふらつきは多少あるものの、
首の痛みや前足の症状はなく、以前と同様の普通の生活が送れています。