症状・症例

ケース16

症例:馬尾症候群(変性性腰仙椎狭窄症)によりすぐに座りこむようになってしまっていた症例 柴犬 メス 5歳

二週間ほど前から急に歩きたがらなくなり、すぐ座ってしまう、右後ろ足を挙げてしまうということで来院いただきました。
病院では明らかな右後ろ足の異常は認められませんでしたがすぐに座り込んでしまい、明らかに動くのを嫌がる様子が確認されました。
整形学的検査(触診、レントゲン検査)では明らかな異常は認められず、神経学的検査で明らかな麻痺などは確認されませんでしたが、腰仙部の圧痛(腰後ろあたりを押すと痛がる)が確認されました。
変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)を強く疑いMRI/CT検査を行いました。

MRI検査では腰の伸展時のみ第七腰椎-第一仙椎間(馬尾領域)でのやや右側の脊髄の圧迫が認められました。

CT検査では第七腰椎-第一仙椎間(馬尾領域)に高CT値の所見が確認され、右側椎間孔の狭窄が疑われました。

第七腰椎-第一仙椎間は背骨と骨盤がつながる部位で、この部位は背骨でもかなり尾よりの部位なので太い脊髄は存在しませんが後ろ足を動かす神経の一部や膀胱や尾を支配する細かい神経が存在します。他の場所に比べても力がかかる部位で、変形性脊椎症(背骨の関節炎)や靭帯の肥厚、ヘルニアなどが発生しやすい部位です。これらにより神経の圧迫が起こると腰の痛みや跛行(びっこ)が起こり歩きたがらなくなったり、さらに進行するとナックリング(後ろ足を引きずる)や失禁が見られるようになります。(このような状態を馬尾症候群と呼びます)

今回は腰を伸ばした時にこの部位の右側の神経が圧迫されるようになってしまったため、右後ろ足の跛行や腰の痛みが起こりすぐに座り込んでしまうようになってしまったと考えられました。

【治療】
第七腰椎-第一仙椎で背側椎弓切除を行い椎間板突出による神経の圧迫が認められたのでこれを取り除きました。
体重も重い子で、腰の曲げ伸ばしで神経の圧迫の程度が変わることからもある程度背骨の不安定も存在すると考えスクリューと骨セメントによる固定を行いました。

■術後1日
術後すぐから麻痺などは認められず、腰の痛みはあるものの歩行も可能でした。

■術後10日
腰の痛みも落ち着き、引き続き明らかな神経症状などは認められず退院しました。

■術後32日
自宅でも跛行は認められず、すぐに座り込んでしまうこともなくなり快適に歩けるようになったとの事でした。少しずつ散歩の距離を伸ばしていくようにしました。