症状・症例

ケース17

症例:頸部痛と麻痺を見られた症例 ワイヤーフォックステリア 10歳

2ヶ月前くらいから、首をあげるのを嫌がるようになり、右の足と後ろあしがふらつき始め、来院1週間ほど前から症状がより悪化したとの事で来院されました。
病院では歩くことは可能でしたが、明らかなふらつきが認められ、首を触ると激痛が認められ、首を挙げることができない状態でした。
以上から首の病気が強く疑われたので、MRI検査を行いました。

【MRI】
第2-3頸椎部の脊髄右側に腫瘤病変が認められ、脊髄の重度の圧迫所見が認められました。病変は椎間孔から脊椎の外側にまで及んでいる。

【診断】
第2-3頸椎部の腫瘍が強く疑われました。神経根部が腫瘤となり、脊髄を圧迫していたため、末梢神経鞘腫瘍などが考えられました。

【治療】
末梢神経鞘腫瘍は、脊髄から分岐する神経にできる悪性腫瘍です。首から腰、足先の神経までの脊髄周囲の神経(神経根)や、足先の末梢神経までどこでも発生する可能性があります。
今回のように首の脊髄周囲の神経根の発生も比較的多く見つかり、症状が首の椎間板ヘルニアと似ている事があり、発見が遅れることも多い病気です。
足先の末梢神経にできた場合には大きく切除することで完治が可能な場合がありますが、今回のように脊髄に近く、特に脊椎の中に入り込み直接脊髄を圧迫しているような場合には完全に切除することはほとんど不可能であり、抗がん剤や放射線治療への反応も良くないため残念ながら完治が難しい腫瘍です。

今回は腫瘍が大きくなり脊髄を圧迫していたため、右側の前後ろ足の麻痺を起こしていたのと、強い痛みが認められました。完治は難しいですが、このような場合、外科的な切除により麻痺と痛みの改善と延命が期待できる場合があります。
今回は痛み止めでもコントロールができないほどの痛みがあったため、飼い主様と相談で手術による摘出を行いました。
手術では第2−3頚椎の右側より片側椎弓切除を行って神経、脊髄にアプローチを行い、可能な限り腫瘍を摘出しました。
病理検査の結果、「末梢神経鞘腫瘍」と診断されました。

■術後1日
術直後から歩くことは可能でしたが、首の痛みがありました。

■術後2日
少しずつ首の痛みが改善し、右前後足の麻痺の改善が認められました。

■術後4日
首の痛みが軽減し、首を上げ歩く事が出来るようになりました。

■術後7日
首の痛み、麻痺はほとんどなくなったので退院となりました。

■術後3週
散歩にも出て、快適に生活が送れています。