基本的に、発症当日に検査から治療を全て行います。
*治療を行う外科医が当院では4名おりますので、治療ができない日は実質ありません。また、緊急の場合は、夜間検査および治療も可能です。
予防の難しいヘルニアは、早期発見が何よりも重要です。治療方法は大きく分けると“外科治療”“内科治療(保存治療)”の2つ。
圧迫を取り除くのか、そのままに治療を継続するのかが治療の選択肢です。
このどちらを選ぶかは飼い主自身の考えに大きく左右されます。また、東洋医学などによる緩和療法も存在します。
それぞれの違いを比較すると・・・
外科治療の場合は脊髄を正常に近い状態に戻すことが目的です。
高い回復率/早期の回復/早期のリハビリ開始/運動制限が必要ない
手術をすること
圧迫している椎間板物質を取り除く根本的な治療法です。
手術により脊髄を圧迫する原因になる椎間板物質を取り除くことを目的とし、早期回復を期待します。外科的な治療の目的は正常な位置から飛び出してしまった椎間板物質を物理的に取り除くことになります。そのため、治療の遅れや、重症度によっては回復が思わしくないこともあります。
一般的な外科的な治療法は片側椎弓切除術という術式が用いられます。この術式は脊髄を圧迫している椎間板物質が脊髄の何れか片側、もしくは脊髄の真下に存在するときに利用されます。
これは脊椎の横側に穴をつくりそこから圧迫物質を除去する方法です。
この方法は脊髄の真上の骨を切除する方法となり、脊髄の真下を確認することが不可能なため、一般的には圧迫物質の除去には向きません。
しかし、左右両方からの圧迫や、椎間板物質の特定ができない際には、減圧をすることを目的に行います。
経皮的に椎間板物質を除去する方法が行われることがあります。
ある種の椎間板物質を溶かす酵素を注入し、患部の椎間板物質を溶かすことにより脊髄の圧迫をへらし症状を軽減するものや、レーザーで同様に椎間板物質を蒸発させるものなどもあります。
手術を行う前に切除すべき部分が明確な場合、片側椎弓切除術を上回るメリットは存在しないと考えられます。
内科治療(保存治療)の場合は、圧迫はそのままで
どのように症状を緩和するか(状況によっては歩行が可能な状態)が
治療の目的になります。脊髄を正常に近い状態に戻すことが目的です。
手術をしないということ
低い回復率/長期のケージレスト(4~6週間)/リハビリ自体による脊髄の再ダメージ/生涯にわたる運動制限
圧迫している椎間板物質を除去せずに行う治療法です。
現在の状況を悪化させないことを目的とし、その状態で症状の回復を期待します。
物理的な圧迫の原因である椎間板物質は取り除かれてはいないため、体を動かすだけでも脊髄への再ダメージの危険があります。
そのため、長期間のケージレストが治療において必要です。
ケージレストとは、患者自身がぎりぎり動ける程度のスペースで管理をすることです。
期間は4〜6週間といわれています。
この期間は破綻してしまった椎間板の繊維輪が修復されるまでの期間とされています。
激しい痛みを伴う場合には鎮痛剤を使用することがありますが、疼痛の緩和は犬の積極的な運動を助長してしまうので注意が必要です。
ステロイド剤の投与は議論が存在しますが、ヘルニアの治療としては有意な差はないとされています。
しかし、椎間板ヘルニアだけではなく、脊髄損傷、脊髄炎が疑われる際には積極的に使う必要があると考えられます。
確定診断がついていない段階では、炎症や損傷がある可能性も視野に入れステロイドを使用することが多いです。
これらのほか、赤外線レーザーや針治療などの物理療法治療なども存在しますが、これらの治療も椎間板物質の物理的な除去ではなく、疼痛の緩和が目的であるということは十分に理解する必要があります。
検査を行う施設や検査部位などにより違いはありますが、一般的に造影レントゲン検査・CT検査・MRI検査の順に検査費用は約2倍ずつ高くなります。
検査で得られる情報量はそれぞれ2倍以上は優にありますが、検査費用だけでなく、その後の治療費などのこともありますので飼い主様と一緒に検討します。